装画に負けない小説を
森見登美彦『宵山万華鏡』を読了。
そりゃ『美女と竹林』とくらべたら何倍も面白いものだったのだけれど、なんだかこぢんまりとしちゃいましたね。
帯には『森見流ファンタジーの新境地』の文字が躍っているのだけれど、読んでみれば分かるとおり何一つ
新境地といえるお話ではありません。冴えない大学生や同じ場面を別の登場人物からの視点で描いたものなど
いつもの森見小説でございます。『四畳半神話体系』や『きつねのはなし』なんかの応用編といった感じですね。
ここ最近の数作同様、少ない時間であまり構想も練らずにぱっぱとかたづけたような印象も持ちました。
今作で気がついたことは森見登美彦って清水義範系のパスティーシュ(模倣)作家なのではないかということで
す。実際、この小説の中にも清水義範からの影響を伺わせる部分があって、文体もいかにも大仰でどこかで読ん
だことがある言い回しを本人もあえて使っているようですから、この想像も大きく的を外してはいないと思うので
すがどうでしょうか。
唯一評価できるのは素晴らしい装画ですね。水彩タッチで描かれる昭和の婦人雑誌の挿絵のようでいてモダン
な雰囲気も併せ持つイラストはこの小説にはもったいないほど良くできています。
さやかという女流画家の仕事らしいのですが、調べてみると桜庭一樹の『少女七竃』の装画を手がけた方でした。
9月に個展があるそうなのでちょっと覗いてみたいなと思いました。
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